読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

駆け擦りエロスに後追いタナトス

今日の貴方は昨日の私

私は、泣く代わりに雲を観ていた。

春にれ

 

 父と母の関係が、どうにも拗れている。

 

家の中で所在がなく、母と父の間を行ったり来たりしていた俺は、外に出た。

 

近所をふらふらしていると、ふと、幼い私が俺を見上げていた。

俺を?…………違う。

空だ。空を見上げているんだ。

いや、雲を観ているんだ。

 

黒いランドセルの背中が、寂しげに揺れている。

ああ……。

 

「あの雲はね怪獣で、隣の怪獣と闘ってるんだ!」

見えない。見えなくなってしまった。

 

雲は、……雲だろ。

 

大人に、なった、な。

嬉しいよ、凄く。嬉しい。

でも、辛いよ。寂しいよ。

 

俺には、君が必要なのに、いつの間にか見えなくなった。忘れてしまった。

 

人生は、雲だよな。

幼い日の物語。私を見なくなった日。俺が死んだ日。

 

「もういいよ。また、観ようよ。また、始めよう」

 

ありがとう。

 

泣かせてすまん。また、一緒に生きよう。

 

雲を観ていこう。